高齢期の住まい選び:多様な選択肢と家族で考える後悔しないためのポイント
高齢期の親御様の住まいについて、漠然とした不安を抱えつつも、何から検討を始めれば良いか迷われている方は少なくないでしょう。ご家族で将来の住まいについて話し合うことは、親御様が安心して暮らせる環境を整える上で非常に重要です。しかし、多様な選択肢がある中で、どの情報から手をつければ良いのか、またどのように家族間で意見をまとめれば良いのか、といった課題に直面することもあるかもしれません。
このコラムでは、高齢期の住まいに関する主な選択肢とその特徴、そしてご家族で検討を進める上での大切なポイントを解説します。ご自身の親御様に合った「わが家のカタチ」を見つけるための、具体的な第一歩となれば幸いです。
高齢期の住まいの多様な選択肢
高齢期の住まいには、主に以下の三つの大きな方向性があります。それぞれの特徴を理解し、親御様の状態やご家族の状況に合わせて検討を進めることが大切です。
1. 自宅での暮らしを継続する選択
住み慣れた家で最期まで暮らしたいと考える方も多くいらっしゃいます。この選択肢では、現在の住まいを高齢期の生活に合わせて調整することが中心となります。
- バリアフリー改修: 手すりの設置、段差の解消、浴室やトイレの改修など、身体機能の変化に対応するためのリフォームを検討します。
- 介護サービスの利用: 自宅で生活しながら、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなどを活用し、日常生活をサポートします。
考慮すべき点: 改修費用や、介護サービスの利用料が発生します。また、家族によるサポートが必要となる場面も増えるため、ご家族の負担や役割分担について話し合いが必要です。近隣に医療機関やスーパーがあるかといった周辺環境も重要になります。
事例の類型: Aさんのご家庭では、足腰が弱くなってきたお母様のために、玄関や浴室に手すりを設置し、二階の寝室を改修して一階に移動しました。週に数回の訪問介護サービスも利用し、住み慣れた家で安心して過ごせるよう工夫しています。家族は定期的に集まり、お母様の体調や困り事を共有し、必要に応じてサービスの追加を検討しています。
2. 高齢者向けの住宅へ移り住む選択
自宅での生活が難しくなってきた場合や、より専門的なサポートを求める場合に検討されるのが、高齢者向けの住宅です。これにはいくつかの種類があります。
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住): 安否確認や生活相談サービスが提供される賃貸住宅です。食事提供や生活支援サービスを追加することも可能です。比較的自立度の高い方から、軽度の介護が必要な方まで幅広く対応しています。
- 有料老人ホーム:
- 介護付有料老人ホーム: 食事、入浴、排泄などの介護サービスが常時提供されます。重度の介護が必要になっても住み続けられる安心感があります。
- 住宅型有料老人ホーム: 介護サービスは外部の事業者と個別に契約して利用します。生活の自由度が高い点が特徴です。
- 健康型有料老人ホーム: 自立して生活できる健康な高齢者向けの施設で、介護が必要になった場合は退去が原則です。 (注: 上記以外にも様々なタイプの施設があります。)
考慮すべき点: 入居一時金や月額利用料など、費用が高額になる傾向があります。提供されるサービス内容、医療連携体制、居室の広さや設備、立地なども重要な検討項目です。見学を通じて、施設全体の雰囲気やスタッフの対応を直接確認することをお勧めします。
事例の類型: Bさんのご両親は、共に健康ではあるものの、将来の生活に不安を感じ、生活支援サービスのあるサ高住への入居を選ばれました。食事の準備や安否確認のサービスにより、離れて暮らすBさんも安心感を得られています。一方、Cさんのご家庭では、お父様に認知症の症状が見られ始めたため、24時間体制の介護が受けられる介護付有料老人ホームを探し、専門的なケアを受けられる環境を選びました。
3. 医療・介護施設へ入居する選択
より専門的な医療ケアや重度の介護が必要な場合に検討されるのが、医療・介護施設です。
- 特別養護老人ホーム(特養): 公的な施設で、原則として要介護3以上の方が入居対象となります。費用が比較的安価ですが、入居待機期間が長い傾向があります。
- 介護老人保健施設(老健): 病院と在宅の中間施設として、リハビリテーションを中心とした医療ケアや介護を提供し、在宅復帰を目指します。入居期間には制限があります。
- グループホーム: 認知症の診断を受けた方が、少人数で共同生活を送る施設です。専門的なケアを受けながら、家庭的な雰囲気の中で生活することができます。
考慮すべき点: それぞれ入居条件が定められており、特に特養は待機期間が長くなることが多いため、早めの情報収集と申請が肝心です。提供される医療ケアの内容や、緊急時の対応体制も確認しておくべき点です。
家族で考える後悔しないためのポイント
多様な選択肢の中から最適な住まいを選ぶためには、ご家族での話し合いが不可欠です。
- 親御様の意思を尊重する: 何よりも親御様ご自身の希望や、これまでの生活習慣を尊重することが大切です。無理強いせず、時間をかけてじっくりと話し合いましょう。
- 現状と将来の変化を予測する: 親御様の現在の健康状態はもちろん、今後起こりうる身体機能や認知機能の変化も視野に入れて検討します。長期的な視点を持つことで、後悔の少ない選択につながります。
- 経済的な側面を考慮する: 各選択肢にかかる費用(初期費用、月額費用)を具体的に把握し、年金や貯蓄、ご家族からの支援を含めた資金計画を立てることが重要です。
- 情報収集と見学を徹底する: パンフレットやインターネットの情報だけでなく、実際に施設を見学し、スタッフの様子や入居者の雰囲気、提供される食事などを確認しましょう。複数の選択肢を比較検討することが大切です。
- 専門家の意見を聞く: ケアマネジャー、地域包括支援センターの職員、ファイナンシャルプランナーなど、専門家の意見やアドバイスを積極的に求めましょう。第三者の視点が入ることで、客観的な判断が可能になります。
まとめ
高齢期の親御様の住まい選びは、ご家族にとって大きなテーマであり、不安や疑問が尽きないかもしれません。しかし、多様な選択肢を理解し、親御様の意思を尊重しながら、ご家族みんなで話し合い、情報収集を進めることで、必ず最適な「わが家のカタチ」を見つけることができるでしょう。
このコラムが、皆様の住まい選びの一助となり、ご家族の皆様が安心して未来を考えるきっかけとなれば幸いです。